本ビロードコート地
近年無くなりつつある技術の一つ「本ビロード」。
▼黒地「本ビロード」コート地
(質感を出すためわざと生地をくちゃくちゃにして撮っております。
普通に撮りますと、ただの黒い生地に見えてしまいまして、
撮影に苦労しました。笑)
「ビロード」は漢字では「天鵞絨」と書きます。
やわらかな手触りや、色合いにマット感と光沢感を兼ね揃えた生地は、
なんとも言えない心地の良い素材ですね。
また起毛している生地ですので
普通の縮緬系や紬系の反物でつくるコートに比べ
機能的な意味でも防寒コートとして珍重され、
一昔前までは街でもよく見かけたものです。
しかし意外とその織り方は一般的にはあまり知られていません。
ごく簡単に説明いたしますと、
生地を織る際に「針金」を緯糸(よこいと)と同じように打ち込みます。
織り上がった後、針金の上から針金に沿って
経糸(たていと)をカットしていきます。
そうするとカットされた部分が起毛し、ビロードとなる訳なんです。
この時、カットせずに針金を引き抜いただけのものは
「輪奈(わな)ビロード」と言います。
カットしたりカットしない部分を作ることで柄も描けるわけです。
古くは明治期に京都の千總さんが「ビロード友禅」という技術を開発し、
ビロードの生地に更に友禅を施した豪華なものも存在しました。
残念ながらこの「本ビロード」、職人さんが減少してしまい、
今ではほとんど見れなくなってしまいました。
ただ最近では針金でなく溶剤で溶ける化学的なもので代用し、
織り上がった後に溶かして
輪奈ビロードになる技術も開発されているようです。
良い技術はぜひ後世に残していきたいものです。。。
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